2019年クリエイターEXPO出展戦略あれこれ

2019年クリエイターEXPO出展戦略あれこれ

2019年4月3日〜5日まで開催された、クリエイターEXPOに出展いたしました!

会期中、多くのお客様にご来場いただき、誠にありがとうございました。

商談会に個人で出展するのは初めてでしたが、事前に過去の出展者様からの情報を得て、戦略を立ててから出展することができました。
SNSやブログ等で、惜しみなく情報をご提供くださったクリエイターのみなさま、ありがとうございました!

出展にかかる具体的な費用やスケジュール、あると便利な備品などの情報は、すでに多くの出展者様が情報提供されています。
そこでわたしのブログでは、クリエイターEXPOにどんな目的を持って出展し、どんな戦略を練って、実際はどんな成果が得られたのか(※会期中の範囲での成果)という点に絞って、ご紹介します。


出展の目的を決める

まずクリエイターEXPO出展にあたり、自分の目的を決めました。
目的は「営業先を広げる」ことです。

私の場合は、今年で独立3年目ということもあり、すでに多数のお客様がいて、仕事の実績もそこそこありました。

ですが独立してからの営業活動は、9割が「ポートフォリオ営業」のみでした。
具体的には、自分のイラストが、どんなお客様の、どんな事業に貢献できるのかを自分で調べ、作品集を直接お客様へお送りする、ということです。

今の所、この「ポートフォリオ営業」のみで仕事に困ったことはなく、年々受注数も増えていました。

ですが、あくまで「自分で想定、調査ができる範囲」の営業方法ですので、例えば自分では思いつかないような業種や、想定外の場所には届かないことが難点でした。

そこで今回は出展にあたり、これまでの営業先以外で、どんな業種の方が、どんな事業でイラストを必要とされているのか?という情報を収集し、今後の営業先を広げることを目的にしました。


出展のためのマーケティングをする

名前ではなく、イラストの特徴を前面に

目的が定まったところで最初に取りかかったのは、自分のイラストに、特徴がわかるよう“名称をつける”ということです。
イラストレーターに限らず、クリエイターに多いのは「自分の名前を売る」ということ。
自分の名前をより多くの人に知ってもらい、覚えてもらうということに注力しがちだと思います。

ですがこのような商談会では、来場しているお客様からすると、極端な話「名前はどうでもいい」です。
名前で、ビジネスの判断はしません。(よほど有名な名前なら効果はあるのかもしれませんが…)

それよりも、このイラストレーターは何が得意なのか?どんなイラストの実績があるのか?こちらの要求を叶えられるのか?ということを、“すぐに”判断したいはずです。

会場を実際に視察してみて痛感したのは、来場者は「ブースの上方しか見ない上に、数秒で通り過ぎてしまう。」ということです。

忙しい人ほど「じっくり見る」ということが難しいので、見知らぬイラストレーターの名前を大きく表示しても、読んでももらえないだろうな、ということが容易に想像できました。

そこで今回は、自分のイラストに「解説イラスト」という名前をつけてイラストの特徴をアピールし、自分の名前は小さく表示することにしました。

「解説」という特徴が一目で伝わるよう、ロゴデザインも作りました。


なぜ名称を「解説イラスト」にしたか?

なぜ自分のイラストに「解説」とつけたかと言いますと、自分の得意分野であり、実績が最も多いのが、解説するためのイラストレーションだからです。

例えば企業のコンテンツサイト、書籍(実用書やビジネス書)、社内マニュアル、サービス説明、商品説明、解剖学や生理学の説明など、「伝えたいけれど伝わりにくい、専門的な情報」をイラストで分かりやすくすることが、自分の得意分野だったからです。(この辺りは、そもそも私がイラストレーターとして開業するに至ったことや、経営理念にも絡むことで、書き出すと長いので割愛します…)

それから、競合が少ないから。

ぶっちゃけ、イラストレーターは星の数ほどいます。私よりも上手くてセンス抜群の方たちも、星の数ほどいます。
そしてクリエポの会場はもちろん、イラストレーターの情報冊子などをご覧いただけば御察しの通り、イラストレーターに人気のテイスト「かわいい」「おしゃれ」「やさしい」イラストは、レッドオーシャンそのものです。

このレッドオーシャンで商売を始めることは、飲食店に例えるならば「美味しくて固定客もいるラーメン店が大量にある地域に、これから”美味しさ”で売り出す新規ラーメン店を出す。」ことと同じです。

地域の客数は、インフラ等が変化しない限り、大きくは変わりません。生活を確保しながら、老舗の味を上回る味を追求し、多店舗から限られた固定客を奪う、長期の持久戦。

ものすごい時間と労力と費用がかかることが想像されるかと思います。

私は、自分がそんな商売ができるような、根性も資金力も技術もない”凡人”であることを痛感していました。
そこでイラストで食べていくために、レッドオーシャンでの勝負は避けるべし、と心に決めました。

今回の商談会でも、レッドオーシャンのコピー(かわいい、おしゃれ等)は絶対に使わないことにしました。


出展の展示内容を決める

展示は「主役を決める」

出展の目的と、展示したい内容が決まったので、次は具体的に会場でどのように展示をするかについて考えました。

展示する際に気をつけたのは、「主役を決める」ことです。
デザインと一緒で、「あれもこれもそれも」と情報を入れると、あっという間に見にくくなります。
ましてや会場では、お客様に見ていただけるのは、わずか”数秒”だけ。

数秒で
「どんなイラストを描いているか」
「クオリティはどのくらいか」

を瞬時に判断していただき、あわよくば興味を持っていただいて、パンフレットも持っていっていただきたい訳です(笑)

そこで、展示物の主役は、上方の巨大な垂れ幕にしました
メインのキーワードは、前述した名称「解説イラスト」。
その他”キーワード”は、3つまで。人は一度に多くの視覚情報を与えられても認識できませんので、最高3つにしました。
そしてお客様は基本的にブース上方しか見ませんので、ここに注力することにしました。

実際は、こんな感じで作りました。

「解説イラスト」のロゴがトップ。
下に、解説イメージのメインイラスト(淡白すぎると周囲の情報に負けてしまうので、なるべく描き込んで線を多くしました。)。
ワードは、解説が役立ちそうな「出版」「コンテンツ」「広告」の3つのみ。
「他にも、これもこれもそれもできるんですけど…!」とついつい入れたくなりますが、入れれば情報としては「全滅」しますので、我慢しました。

配色も、オレンジと黒の補色コントラストでかなり派手にしたため、見てくださったお客様や出展者様から「ものすごく目立ちますね…!!」という感想をいただきました。(実際、かなり目立っていました…)

印刷は、地元・静岡でお世話になっている株式会社ナガハシ印刷様にお願いしました。印刷の美しさはもちろん、芯棒は分割でき、折りたたむとトートバッグに入る仕様。
非常にコンパクトで便利でした!

展示物はビジュアル統一

それから、垂れ幕、パンフレット、名刺は全て同じビジュアルで統一しました。バラバラだと、なかなか覚えてもらいにくいためです。

名刺も、名前よりも「解説イラスト」が主役。

服装も口調も「ビジネス」モードで

そして、パンフレットや本人の服装に至るまで、全て企業っぽさを出し、「ビジネス」モードにしました。
「私はこの場に、ビジネスをしに来ています。」というメッセージです。

多くの企業にとって、フリーランスは「得体の知れない個人」です。会社でしたら、法人としての社会信用がありますし、資本金や業績など調べることができます。

ですがフリーランスとなると、素性はもちろん「納期は守ってくれるのか?」「きちんと連絡を取り続けられるのか?」「クオリティはあるのか?」「情報を外部に漏らしたりしないか?」など、仕事を依頼する上での懸念は尽きません。

フリーランスへの仕事の発注は、ある程度のリスクを負うことになります。

つまり、フリーランスはゼロベースからお客様の信用を得なければならない立場なのです。
ですが会場では初対面ですので、この信用度はゼロに近いと言えます。

そこで、なるべく初対面でも「きちんとしている感」(小手先ですが…)と感じていただけるよう、パンフレットには経営理念や本人の写真、実績をきちんと掲載し、対応も「1つの会社として」するよう、心がけました。

ただ、実際にはこれをやり過ぎてしまったようで、会場で何度も「会社なんですか?」「個人じゃないんですか?」とお客様に問い合わせをいただいてしまったので、ほどほどが良いようです…。


展示の成果について

このように準備をしてのぞんだ3日間の成果ですが、当初の目的通り「こういう業種の方も必要とされてるのか!」と言う新たな情報を多く得ることができ、出展費用以上の効果がありました。

具体的には、今まで営業したことがない業種(特に通信やIT企業、建設、研修センター、海外のAD、広報、コンサルタントなど)の方からお声がけいただき、視野が一気に広がりました。

もちろん、大手企業の方や広告代理店、出版社の編集部の方も多数いらっしゃり「商談会ってこんなチャンスあるんだなあ〜」という感動もあったのですが、個人的には当初の出展目的が達成できたので、安心しました。

今は出展に関する情報がSNSで錯綜していますので、他の出展者さんの成果を見ては「パンフレットそんなに配れなかった…」「具体的な商談が少なかった…」と比較してしまいがちですが、それよりも自分がどんな目的で出展し、どんな成果を得たのかを冷静に、客観的に評価した方が、次の施策に繋がるのではないかと思います。

成果以上に嬉しかった「初めまして」と再会

やや余談になりますが、出展を通じて、これまでお会いしたことがなかった都内のお客様にもお会いすることができました。
ポートフォリオ営業ばかりだったので、それこそ何十万という単位でお仕事をいただいているお客様でも、お電話とメールのみ、という方が多く(現在の反省点です…)実際にお会いすることができて、とても嬉しかったです。

また地元・静岡からはるばる駆けつけてくれた友人知人、お客様も多くいらっしゃいましたし(本当にありがとうございます!)たまたま再会できた大学の同級生や同業者の友人、文房具業界の仲間、はたまた何年も会えなかった趣味の友人(!)にも再会することができました。

さらに「Twitterいつも見てます!」とわざわざお声がけくださったフォロワー様も10人以上いらっしゃり(ありがとうございます…!!)まるでお祭りのような3日間でした。

おかげさまで、ブースは毎日どなたかが来てくださっているような状況で、お隣の皆様に「いつも賑わってて凄いですね〜」と言っていただいたのですが、ビジネスの商談はほとんどなく数件で…(笑)同窓会のようになっていました。

お越しいただいた皆様、ありがとうございました!


次回の出展に向けて

会期中に、来年度(2020年)の同展示会出展を申し込みました。

今回は会場端のブースでしたが、次回は中央寄りのブースになります。
ネット上の情報では、ブースの位置によってかなり人の流れが違うそうなので、今回よりも多くの集客が見込めるのではと予想しています。

ちなみに今回の会場端ブースですが、そこそこ人の流れは多かったのではないかと感じました。すぐ横で開催されていた通信・ITイベントから流れてくるお客様もいらっしゃり、個人的には有り難い状況でした。

2021年以降は未定ですが、今回の出展では大きな手応えを感じることができたので、展示会という新しい営業活動も色々と試行錯誤しながら、続けていきたいと思います。