橘玲さん著書『幸福の「資本」論』

橘玲さん著書『幸福の「資本」論』

橘玲さんの『幸福の「資本」論』を読了しました。
非常に分かりやすく、現在の人生設計、働き方において役立つ実践的な内容でしたので、こちらの記事でご紹介します。

橘さんは、人が幸福になるためには、下記の3つのインフラが重要であるとしています。

  1. 金融資産
  2. 人的資本
  3. 社会資本

詳細はぜひ著書をご覧いただきたいのですが、本記事では、3つのインフラのうちの「人的資本」「社会資本」についての感想を書きたいと思います。

というのも、フリーランスにとって「人的資本」と「社会資本」は命綱だからです。
また、この二つを考慮したために私が独立という道を選んだということもあって、今回の記事にまとめました。


会社内で「人的資本」「社会資本」を作ることの難しさ

本書にでてくる「人的資本」とは仕事力、そして「社会資本」とは、共同体のことです。
この二つを形成することは、起業や独立をする際のキーワードになります。

ですが会社員をしていると、これらを作ることが非常に難しいとも言えます。

人的資本で「自己実現できない」ことの深刻なデメリット

橘さんは、「人的資本」を「クリエイティブクラス(仕事の価値が時給計算できない仕事)」と「マックジョブ(マニュアル化された仕事)」の2つに分け、後者を選択した場合、非常に厳しい状況になると著書で警告しています。

というのも、例えばその仕事が、成長著しいテクノロジーで代用できるものであったり、社内でしか通用しないものである時、その人は少なくとも定年には人的資本のほとんどを失い、稼ぐ力を失うことになります。

そして、「マックジョブ」を選んだ場合の最も深刻な問題は、仕事で「自己実現できない」からです。

私たちは仕事をすることで味わう充実感、人や社会への貢献感によって、自己実現をし、幸福感を得ます。

そして仕事とは、自分の人生時間の大半を費やすことです。
ましてや「平均寿命100年」「深刻な人材不足」の現代で、定年が何歳になるのかも見通せないという現状を考えれば、仕事を何十年続けるのかは、明確にできません。

そんな途方もない時間を費やす仕事を、自己実現できないこと、例えば「自分がやりたくないこと」「好きではないこと」にした場合、まさに”生き地獄”となり、あやゆる疾病などのトラブルを引き起こす原因となります。

また「自分がやりたくないこと」に対して、人は頑張ることができません。以前の記事でも書きましたが、好奇心や興味がないことは、努力しても結果が出にくく、無理に頑張れば、あっという間にエネルギーが尽き、心身を病んでしまいます。

この「これからの時代は、好きなことを仕事に」という選択は、橘さんだけでなく、堀江貴文さん、DAIGOさんなど、多くの著者が推奨しています。

社会資本を作らないことの恐ろしさ

一方「社会資本(共同体)」とは、家族、友人、仲間、地域人など、自分が所属する、あらゆるグループを指します。
私たちは生活のあらゆる場面で、この共同体に助けられています。

会社員を長年続け、独立してから痛感するのは「会社員は、社外の共同体を構成したり広げたりすることが難しい」ということです。

私が会社員で、社外で何も活動していない頃は、人間関係が「家族」「友人(同級生)」「会社の同僚」で構成されていました。

今振り返ると、非常に狭い空間です。

そしてこのような狭く閉じられた関係の中では、ほぼ自分で人間関係を選択することができません。
閉じられた場所から動かず、固定された人間関係の中で、何とかストレスが少ない方法を見つけるしかない、という閉塞感のある状況になります。

例えば「会社」という共同体は、この傾向が顕著です。
上司や部下はもちろん、同僚や取引先に至るまで、ほぼ自分で選択することができません。

私も数年前までは「このストレスは当たり前」「苦手な人でも、上手くやるのが社会人だ」だと感じていたのですが、社外で活動してみると、「自分は人間関係を自分自身で選ぶことができる」ということを実感しました。

イベントや趣味の集まりに参加したり、社外の仕事で様々な人と関わることで、多くの人と出会うことができましたし、長い付き合いができる友人もたくさんできました。
「こういうことで相談したい」「助けてほしい」と思った時、頼ることができる人がいるのは、本当に心強いことです。

ですが、もし会社の外へ出なかったら、こういった人間関係は構築できませんでした。

現在ほとんどの会社員の方が、こういった閉塞感のある場所から動けず、ひたすら狭く囲まれた人間関係の中で疲弊していくという現状があり、またそれが悪化することで、精神疾患、自死といった深刻な自体を引き起こしています。

これが「社会資本」を作らないことで起きる、深刻な問題としてあげられます。

人は「つながり」からしか幸福を得られない

このように様々な問題を孕む社会資本ですが、この”共同体”なしでは、私たちは幸福を得られません。

橘さんは著内で、人間が「社会的生物」である以上、社会資本(つながり)によってしか幸福を得ることができないとも明言しています。
確かに、全ての共同体を捨てて誰もいない山奥で、一人で生きたとしても、幸福感を得ることができそうにありませんよね…。
私たちはやはり、人との「つながり」によって幸せになる生き物だのだと、実感します。

そのため、本書ではこの社会資本(共同体)を「政治空間(強いつながり、家族、友人など近しい関係、金銭が絡まない関係)」と「貨幣空間(弱いつながり、ビジネスや趣味の関係)」に分けています。

そして「政治空間」の一部を「貨幣空間」に移し、さらに貨幣空間を広げることを提案しています。

「政治空間」は幸福感を得るために欠かせない空間ですが、距離が近く、身動きが取りずらい複雑な空間でもあります。
そのため、広げすぎると様々な問題が起き、心身に負担がかかります。

ですので、「政治空間」の一部を「貨幣空間」に移動させ、さらに「貨幣空間」を自力で広げ社会資本を作ることを、ベストの選択として挙げています。

貨幣空間の広げ方は、SNSや各種交流会など様々な方法が考えられますが、いずれにしろ会社の中、家庭の中だけに生活空間を置いていてば、一向に広げることはできません。

自発的に行動し、徐々に広げていく必要があります。


最も幸福な人生である「フリーエージェント」の生き方

これまでの内容を踏まえ、著者は、金融資本、人的資本、社会資本においてあらゆるものを選ぶことができる「フリーエージェント」こそが、幸福感を得るための”最強の戦略”として提案しています。

というのもフリーエージェントは、人生の3つのインフラに対して、下記のメリットを持っているからです。

  • 金融資本では、経済的に独立することができる。
  • 人的資本では「自分の好きなこと」を選択し、集中投資することができる。
  • 社会資本では貨幣空間を自由に行き来し、拡大することができる。

特に「社会資本」に関しては、フリーエージェント(個人事業主)になってから、様々な共同体に関わることで自分の仕事の幅や仲間も広がっており、仕事の面白さ、楽しさを感じています。

私自身、まだまだフリーエージェントの1歩を踏み出したばかりですが、本著の内容を参考に、これからも自由に選択できるように生きていきたいと思います。

非常に読みやすい1冊ですので、ご自分の生き方、働き方について悩まれている方は、ぜひ読んでみてください。