書評「〈インターネット〉の次に来るもの」ケヴィン・ケリー

書評「〈インターネット〉の次に来るもの」ケヴィン・ケリー

先日読んだ、アメリカの雑誌『WIRED』創刊編集長として、世界のテクノロジー進化を最前線で見続けてきた、ケヴィン・ケリー氏の著書「〈インターネット〉の次に来るもの(原題:THE INEVITABLE」をご紹介します。

近未来、テクノロジーの進化によってに起きる世界の「避けられない流れ」を、12個の法則にまとめています。

現代はまさにIT革命による激動の真っただ中ですが、この先テクノロジーはどのように人の生活に影響を与えるのか、私たちはどのような生活になっているのかを詳しく知りたくて、読んでみました。

かなり厚く濃い内容でしたので読了にかなり時間がかかりましたが、未来の姿が具体的にイメージできて、ワクワクしました!

興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください!


近未来における12の不可避な潮流

1.Becoming(なっていく)

私達は、あるツールをどんなに長く使っていたとしても、際限ないアップデートによって「永遠の初心者」でいることになります。

新しいデジタルツールを購入しても、すぐ新しいものが発売されますし新しくインストールしたOSも、どんどんアップデートしなければ使い続けることができません。

しかも、例え1つのツールに熟練することができても、次から次へと新しい進化に対応していく必要があります。
つまりこれから先もずっと、技術の進化に人の進化が追いつかない状態が続くのです。

これによって、私たちは永遠に完成しない「Becoming(なっていく)」の状態に置かれることになります。

2.Cognifynig(認知化していく)

AIやロボットが著しい進化を遂げて、どんどん私達の生活の中で入り込みます。

それに仕事を奪われるということではなく、私たちはそれによって新しい仕事を考える時間をもつことができます。
人間がやらなくても良い仕事はテクノロジーに任せて、私たちは新しいものを創造することに時間をかけることが可能になります。

3.Flowing(流れていく)

ネットワークの進化によって、私達の仕事はまとめておこなう「固まり」から、すべてのことをその日のうちに行う「1日単位」となり、さらに現代は、第3段階の「リアルタイム」へと変化しています。

今後もこの流れは強まります。リアルタイムで流れ続けるTwitterのタイムライン、facebookのウォールのように、私たちは仕事を常に「流れ」で行うようになるでしょう。

4.Screening(映しだしていく)

私達が使っているスクリーンは、今後さらに強く、薄く、大きくなっていきます。

そして私達がスクリーンを見ているように、スクリーン側も私達を見ています。
スクリーンを通してあらゆる情報が収集され、それが社会に活用されていきます。

5.Accessing(アクセスしていく)

今後はものや情報など、あらゆるものを「所有する」ということの価値が薄れていきます。
現在、ミニマリズムがブームとなっていますが、このように物を所有せず、いかに身軽な状態になって移動できるのか、ということが重要視されます。

そして物を所有するのではなく、いつでも必要なものに「アクセスする」というスタイルが普及してきます。

6.Sharing(シェアしていく)

私たちはこれから先、音楽、映像、文章、あらゆるものをシェアし、コピーしていきます。
1つのコピーがメディアによってリンクされ、操作され、注釈を足され、タグ付けされ、ハイライトされ、ブックマークされ、翻訳され、活性化されることが重要視されます。

そして未来では、作品がどれだけうまく流れていくか、より多くの人に関わっていくかということに、作品の価値が移っていきます。

7.Filtering(フィルターをかけていく)

私たちはGoogleやAmazonなど、あらゆるフィルターを使用していますが、この傾向はさらに加速していきます。

そしてテクノロジーによるフィルターを何重にも重ねることで、我々は「自分が何者なのか」を知ることにもなります。
フィルターはいわば「発見装置」であり、個性を最適化してくれるツールでもあるのです。

これによって、あらゆるものがパーソナライズされていきます。

8.Remixing(リミックスしていく)

現在は、アプリケーションなど動画や写真加工、音楽などの創作を気軽に制作できるツールが、非常に安い価格で普及しています。これは、作品を作るための手間を一気に減らしました。

これにより、見るよりも作る方が簡単、読むよりも書く方が簡単、聴くよりも作曲する方が簡単、という、今までとは逆説的な世界が生まれました。

現在は、すでにinstagram、youtubeなど、世界中の人がこのツールを使って作品を創り、発信しています。
この傾向は、今後もさらに加速していきます。

9.Interacting(相互作用していく)

現在開発が進んでいるVRは、より多くの感覚、親密さ、没入感を増していきます。
その技術の向上に伴い、我々の持つ行動、心臓の鼓動、視線など、あらゆるインタラクションが反映され、パスワードになっていきます。

10.Tracking(追跡していく)

これまで希少で貴重だったはずの作品が、これから先の未来では際限なく無料でコピーされるようになります。

「コピーは不道徳である」という価値観を持った私たち世代には非常に受け入れがたいことですが、これから先この傾向はどんどん加速します。

私たちはこれから先「容易にコピーできない価値」例えばパーソナライズ、実体化、本物であることを追求していく必要があります。

これを追い求める人は進んでいき、コピーを禁止したり阻止したりする人たちは時代の流れに取り残されていくことになります。

11.Questioning(問いかけていく)

ウィキペディアのように、私達はあらゆる疑問をスクリーン上で問いかけ、すぐに答えを得ることができるようになりました。
しかしそれによって私達の問いかけが減ることはなく、むしろ得た知識に寄って、さらに多く問いかけるようになるでしょう。
そして私達の問いに答えるテクノロジーは、今後さらに進化していきます。

12.Beginning(始まっていく)

現在は、世界中の人たちがネットワークで繋がり合って、初めて「ひとつ」になることができた、始まりの時代です。
私達一人ひとりがシステムにアクセスすることによって、地球規模のプラットフォームが構築されていきます。
そしてそれはまだ「始まり」に過ぎず、これから先に何が起きるのかは、予測不可能なのです。

これから先の、未来についての事柄がたくさん詰まった1冊でした。

仕事やライフスタイルをどうしようか考える際の大きなヒントになりました。ビジネスにも結びつく要素が多く、何度も読み返したい内容ばかりでした。
今は前時代の価値観がどんどん破壊される激動の時代で、その流れについていけない時「昔はそんなことなかった」という気持ちになりしがちですが、新しい価値を取り入れていけるように、常にアンテナを張ります!

ご興味のある方は、ぜひ読んでみてください。